今週のひとコマ・バックナンバーアルバム…2012年4〜6月掲載分

ドングリーク ドングリークの婚資
カラーシャの結婚は、昔は親が幼少時に相手を決める許嫁婚がほとんどだったが、いまでは恋愛が主流。新郎側から新婦側に贈る婚資は、いまでは鉄砲やお金で払われることもあるが、伝統的にはナベやカメを数十から数百個も贈るのが普通だ。ところが、妻が浮気をして別の男と駆け落ちしてしまうことがよくある。そうなると、新しい夫は以前の夫に、婚資をすべて倍にして返さなければならない(これをドングリークという)。鍋釜を100個受け取っていれば、200個を贈らねばならないのだ。春の農作業が始まる前、両家の代表者たちが集まって、かつてどのくらい婚資を支払ったかを検討し、返すべき鍋釜の数を協議する。[撮影:丸山純] ドングリークでは、前の夫が贈ったナベ・カメの倍の数を返さなければならない。ひとつの家ではとうてい足りないので、親戚中から集め、さらに新品を買い足す。[撮影:丸山純]
ドングリーク 杏の花咲く頃
前夫はいったいどのくらいの婚資を払ったのか。いつも大議論になり、えんえんと話し合いが続く。やがて決着がつくと、前夫の一族の者たちがナベ・カマを背負って、自分の村へと運んでいく。こうして持ち帰られた大量のナベ・カマは、別の男の妻を得るために使われるのだ。[撮影:丸山純] 日本では、春になるといきなり枯れ木に桜の花が咲いて目を楽しませてくれるが、カラーシャの谷では杏の花が春の訪れを告げる。鼻を近づけると、梅に似た優しい香りが漂ってくる。この頃になると幼児も外で遊ぶようになる。この子の着ているのは、いまでは珍しくなった、カラーシャの伝統的な羊の毛で織った貫頭衣。ちくちくするが、暖かい。[撮影:丸山純]
キラサーラス前日 キラサーラスで喪明け
杏の花が咲くと、早春の祭り「キラサーラス」がやってくる。祭りの前日、谷にある5つの村の代表が集まって一団となり、前回の祭り以降で死者を出して喪に服している家を上の村から下の村へと順番に回っていく。[撮影:丸山純] カラーシャの早春の祭り「キラサーラス」の前日、村の代表者たちが川上から川下へと5つの村を回る。訪問するのは、前回の大きな祭り以降、死者を出して喪に服している家々。咲いたばかりの杏の花が付いた小枝を手渡すと、その家の喪が明ける。服喪期間中、配偶者は原則として日中は外出しない。また新しい服を着たり、髭を剃ったりもしない。[撮影:丸山純]
キラサーラス乳搾り 女神クシュマイへの儀礼
キラサーラスの開始が告げられた夜、男たちは家畜小屋に集まって、ヤギの乳を搾る。この時期は仔ヤギが生まれたばかりだし、牧草も少ないので、あまり乳が出ない。搾ったばかりの乳を家畜小屋の守り神に捧げて、浄めの儀礼をおこなう。[撮影:丸山純] カラーシャの早春の祭りキラサーラスの当日。果実と子育てを司る女神クシュマイの神域に各氏族の代表者たちが集まり、昨年から貯蔵している乾燥した桑の実やブドウを女神に捧げる儀礼をおこなう。[撮影:丸山純]
インガオ神でのキラサーラスの儀礼 畑に肥料を撒く
カラーシャの早春の祭り「キラサーラス」。夜になると、各氏族の代表がインガオ神の神域に集まり、聖なる乳を振りかけて儀礼をおこなう。インガオは種子を司る神で、この儀礼を経たのち、この年の農耕が開始される。夜中に、今度は各家の家長がそれぞれ自分の畑に行き、畑の隅に種を埋める。このとき、誰か他の者にその行為を見られてしまうと作物の生育が妨げられるため、こっそりと出かけていく。[撮影:丸山純] 早春の祭りキラサーラスが終わると、農耕が開始される。冬の間休耕していた畑に、家畜小屋に溜まったヤギの糞を運び、肥料とする。まだ、対岸の山の斜面にはべったり雪が残っている。[撮影:丸山純]
牛で犂を引かせて耕す 種まき
ヤギの糞を肥料として撒いたのち、2頭立ての犂で畑を耕す。道路沿いの畑は、借り物のトラクターで耕すこともあるが、多くの畑は山の斜面に開かれていて、トラクターはとても入れない。雄牛を2頭持っている者は少ないので、この時期はみんな、雄牛の貸し借りで頭を悩ませる。[撮影:丸山純] 牛に引かせた犂で耕した畑に、トウモロコシを撒く。このあと、また犂耕して、種を地中に埋める。そうしないと、カラスをはじめ、鳥たちがやってきて種を食べ尽くしてしまうからだ。キラサーラスのあとは急に気温が高くなり、この頃はもうほとんど初夏と呼べるような、暑い日になる。お湿りがあると芽が出てくる。[撮影:丸山純]
ミシンで刺繍を縫う  
春の農作業は力仕事なので、おもに男が担当する。女性たちは、春の大祭ジョシに向けて、服を新調したり、装身具を整えたりする準備で忙しく過ごす。手回しのミシンが普及したため、貫頭衣の裾の刺繍が年々派手になってきている。[撮影:丸山純]  

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